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AIHに関して

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体外受精などの高度生殖医療に関する統計は、日本産科婦人科学会のホームページなどで、医療従事者でない方でも確認できます。しかし人工授精の詳しい統計はなかなか検索しにくいと思います。
当院では開院以来、人工授精に関する、たくさんの角度から検討した統計を、さまざまな学会で報告し、論文として投稿してきました。
そこで、その内容を簡単にまとめ、ホームページで、1問1答形式で公開、解説します。この質問は、患者さんから実際多い質問でもあります。

質問

人工授精は何回まで妊娠率が上がるのでしょうか?

累積妊娠率
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答え

『図2 累積妊娠率』を示します。これは妊娠した方だけを集めた図で、横軸が試行回数、縦軸が妊娠した方の割合です。
例えば、1回目で妊娠するのは、妊娠した方のうち、約30%で、3回までに妊娠するのは、妊娠した方のうち約60-70%と言った具合です。
これを見ますと、最初の3回までに妊娠するのは、妊娠した方のうち約60-70%。6回までで約90%。それ以降はほとんど増えないことが分かります。従いまして、人工授精をお勧めできるのは、6回までと言えます。

質問

高度生殖医療同様に、年齢と妊娠率は相関するのでしょうか?

全周期の年齢別妊娠率(対周期)
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答え

各年齢別の妊娠率は、統計処理が困難なので数値化していませんが、5歳ずつのグループ分けをした妊娠率の比較はあります。
『図1 全周期の年齢別妊娠率』を提示します。
29歳以下のグループは最も妊娠し、30-34歳、35-39歳のグループが、それよりはやや妊娠率が下がります。40歳以上のグループは最も妊娠しにくいです。

質問

精液所見が良ければ良いほど、妊娠率は上昇するのでしょうか?

運動精子濃度と妊娠率(対周期)
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答え

『精子濃度』と『運動率』を掛け算した『運動精子濃度』別の妊娠率『図3 運動精子濃度と妊娠率』を提示します。
これを見ますと、確かに運動精子濃度が高い方が妊娠率が高い様ですが、その差は数%で、ほとんど変わりません。つまり「精液所見が良ければ良いほど、妊娠率が上がるわけではない」ことがわかります。

運動精子濃度と妊娠率
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一方、精液所見が不良の場合はどうでしょうか?この論文発表の当時は、運動精子濃度1000万匹/ mlが正常値でしたので、ここで分けています。運動精子濃度が異常の方でも、妊娠率が保たれていますが、このグループをもう少し細かくグループ分けした図を示します。
運動精子濃度が750万匹/ ml以上あれば妊娠率が保たれていますが、それ以下ですと、妊娠率が下がります。つまり「精液所見が悪い場合は限界がある」ことが言えます。

質問

妊娠分娩歴があっても、同じことが言えるのでしょうか?

累積妊娠率
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答え

上述の「人工授精は何回まで妊娠率が上がるのでしょうか?」の回答と同様、累積妊娠率を提示します。
妊娠した症例だけ抽出した図です。未経妊の方(妊娠したことがない方)、経妊未経産の方(妊娠したことはあるが、流産や子宮外妊娠などに至り、分娩をしていない方)は、前述同様、6回までは妊娠率は上がりますが、7回目以降は妊娠率が上がりません。
一方、経産の方(分娩をしたことがある方)は、9回目まで妊娠率が上がります。
ただしこの統計は、年齢の因子を除くため、40歳未満の方が対象になっています。近年の晩婚化の傾向を考えると、「2人目が欲しい」とおっしゃる方は、40歳以上か、それに近い状態なっていることが想像されます。この統計が全員に当てはまるのかに関しては、もう少し議論が必要だと思います。

質問

精液所見が悪い場合、人工授精を何回までであれば意味があるのでしょうか?

処理前の運動精子濃度が750×104/ml未満の周期での累積妊娠率
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答え

今回提示をするデータは、運動精子濃度の正常値が論文発表当時のものであることをあらかじめお断りしておきます。運動精子濃度が750万匹/ ml以下の異常所見の方に対し人工授精を行い、妊娠した方だけを集めたデータです。横軸は回数、縦軸は『何回目までに妊娠したのか』を表しています。これを見ると、妊娠する方のほとんどは3回目までで、それ以降はなかなか妊娠しないことがわかります。つまり、『3回目まで』は行う意味があります。ただしこの統計も40歳未満の方が対象になっています。

質問

精液所見が異常な場合、どのレベルまで人工授精は意味があるのでしょうか?

注入運動精子数(1000×104/ml未満)と妊娠率(対周期)
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答え

40歳未満の方に対する人工授精で、精液所見が不良だった方だけを集めた図です。運動精子濃度(精子濃度×運動率)が750万匹/ ml以上あれば、一定レベルの妊娠率は確保できます。

総運動精子数と妊娠率
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また、運動精子数(運動精子濃度×精液量)ですと、900万匹が目安になります。
この表は、40歳未満の方を対象に、運動精子数別に5群に分け妊娠率を比較したものです。A群からE群はそれぞれ、精子数が900万匹未満、900-15.6万匹、15.6-50万匹、50-100万匹、100万匹以上です。900万匹未満の群の妊娠率が非常に悪いことから、運動精子数900万匹未満の場合、体外受精など、高度生殖医療を考慮すべきと考えます。ただし、精液所見は採取するごとに所見がかなり変わることももともとわかっていますので、1回の採取だけで決断することはしません。

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